どうやってユニバーサル・パターン ? How can we make patterns universal ?

人間がバーコードを読むことは現実的ではない以上, 人間が容易に認識できるパターンを機械にも読ませることが必要です. 実際,文字認識に代表されるパターン認識の世界では,人間並みの 認識能力を持つ機械を実現するため,多大な努力が払われてきました. その結果,例えば印刷された文字に関しては,一定の条件が整えば,人間と同等か それ以上に読むことのできる機械も出現しています.しかし,条件が満たされなくなると, 機械の認識能力は急速に失われてしまいます. すなわち,文字だけをとってみても,人間が読めるものを同様に読む機械を作ることは 未だに実現されていない困難な目標といえます. 人間が認識できるパターンと,機械が認識できるパターンの間には, 現在の技術をもってしても,なかなか超えられない壁があるのです.

我々の「ユニバーサル・パターン プロジェクト」では, この問題を工学的に解決するため, 従来の「認識手法を改良することによって認識率を改善する」 という発想を転換し, 「認識対象であるパターンを変更することによって認識率を改善する」 というアプローチを採ります. すなわち,人間にも機械にも読めるパターン=ユニバーサル・パターンを 策定して,それを使うのです.

さて,バーコードが高精度で読めることからも分かるように, どのような変更を施してもよいならば,機械にも認識できる パターンを作ることはそれほど難しくありません.事実, 文字自体がバーコードも表すような仕掛けはいくつか提案されています. ただし,機械での認識が容易になれば,それだけ外観が阻害され, 人間には不自然なパターンに見えてしまいます.

したがって,ユニバーサル・パターン プロジェクトの目標は, 可能な限り自然さを損なわずに,いかに人間にも機械にも読めるパターン を策定するかという点にあります. 後述するように,機械での認識が容易になるということは, 認識精度を高めるための情報をパターンの変更によって 与えていることになります.すなわちパターンの変更は, 認識を補助する情報を埋め込んでいることに相当します. 一般に,より多くの情報を埋め込もうとすると, その分,変更の度合いを大きくする必要が生じて不自然になります. また,同じ情報を表現する上で,人間がより自然に感じるパターンと そうでないパターンが存在します. 従って,パターンの自然さは,埋め込む情報の量と,その埋め込み方 (変更の方法)によります.さらに,文字パターンを対象とする 場合には,印刷か手書きかという問題もあります.

以上が,本プロジェクトにおける研究課題に相当します. 詳細はページ下部に譲りますが,具体的には,

  • 埋め込む情報の量と認識率の間の関係を理論的に明らかにすること,
  • カメラを使って印刷された文字パターンを入力するという 厳しい条件のもとで高い認識率を得るために, 具体的な文字パターンを策定すること
  • ペンを使って筆記時に情報を埋め込んで,それを読み出すシステムを 開発すること

の3点を大きな柱として研究を行っています.